【最前線】人工知能(AI)が気候変動への対策「SDGs13」におよぼす影響

Sustty編集部がお届けするSDGs情報です。

マリモっち
やっぱり気候変動は心配だなあ。自分にできることは実践するとして、他になにかいい方法はないのかなあ。
人工知能が社会に大きな影響を与えるって聞いたけど、気候変動も含まれるのかな?

こんな疑問に答えます。

この記事を書く私は、サステナブルに興味がある研究開発者です。持続可能な社会の実現に向けて、気候変動にどう対応していくかを常々考えています。また、新しい技術が活発に検討されている現在、様々な要素を有効的に活用することが大切だと感じています。

そこで本記事では、世界で最も注目されている技術、人工知能(AI)が気候変動への対策「SDGs13」に与える影響を見ていきたいと思います。

人工知能(AI)が気候変動の対策に与える影響の前に知るべきこと

初めに本記事に関連する2つのキーワード、気候変動「SDGs13」と人工知能を紹介します。

気候変動への対策「SDGs13」とは?

気候変動とは、人間の活動によって熱を閉じ込める効果のある温室効果ガスが大気中に蓄積され、長期的に気候が変化することです。産業革命以来、世界の平均的な温度は増加しており、この人為的な変化は温暖化としても知られています。気候変動に対して何も手を講じなければ地球の平均気温は上昇し続け、生態系や私たちの生活に大きな悪影響を及ぼすと考えられています。

気候変動に関しては次の記事で紹介しています。

関連記事:【警鐘】気候変動とは?歴史、原因、現状の進捗度と影響、対策と未来の全てを紹介

 

国連が定めた持続可能な開発目標Sustainable Development GoalsSDGs)」でも、気候変動への対策の重要性が強調されています。13番目のSDGsが「気候変動に具体的な対策を」することを目標とし、温室効果ガスの排出の抑制(緩和)と、地球温暖化現象が招く影響を軽減(適応)することを目指しています。

SDGs13の詳細についてはこちらをご覧ください。

関連記事:SDGs13とは?地球温暖化の問題と持続可能な開発目標「気候変動に具体的な対策を」

人工知能(AI)とは?

もう一つのキーワード人工知能(AI)も簡単に紹介します。

人工知能(AI)

人工知能(AI)とは、学習・推論・判断など人間のふるまいの一部をコンピューターを用いて人工的に実現したもの。経験から学び、新たな入力に順応することで、人間が行うようにタスクを実行することを目指す。また演算処理を自動化することで膨大な量のデータを分析し、パターンの解析や予測を行うことができる。

AIの出現により、私たちの生活におけるすべての分野がほぼ例外なく影響を受けていくと予想されています。例えば、ものづくりの生産性や社会構造、環境分野、コミュニケーションや金融の仕組みといったあらゆる分野がAIの応用先として該当してきます。

2020年には、世界の研究者がAIの環境面への影響を調査し、多くのメリットが期待されることが示されています。

AIのSDGsに関する影響に関してはこちらの記事でも紹介してますので、是非ご一読ください。

関連記事:【2022年 | 最前線!】人工知能(AI)がSDGsにおよぼす影響は?

 

人工知能が気候変動への対策「SDGs13」に与える影響は?

では、ここからは具体的に人工知能が気候変動への対策「SDGs13」に与える影響について紹介してきます。

本記事では大きく5つのポイントを見ていきます。

人工知能が気候変動への対策に与える影響のポイント

① 気候変動や自然災害(暴風雨、干ばつ、海面上昇等)の影響を予測する

② 気候変動が生態系や自然に及ぼしている影響を把握し予測する

③ 気候変動の農作物への影響を把握する

④ エネルギーやものを効率的に利用して温室効果ガスの排出を抑える

⑤ AIを活用して気候変動を解決する新しい技術開発を加速させる

 

① 気候変動や自然災害(暴風雨、干ばつ、海面上昇等)の影響を予測する

AIが気候変動への対策に及ぼす影響の最初のポイントは、気候変動や自然災害(暴風雨、干ばつ、海面上昇等)の影響を予測することです。

現在、気候変動や自然災害の予測に取り組む科学者にとって、AIは必要不可欠なツールになりつつあります。大量のデータを分析することで、気候変動に関する一部の情報を推定したり全体の傾向を把握したりする助けになります。

気候のモデリングは地球規模の変動を数十年の間で予測するもので、使用されるデータ量もそれだけ膨大です。このようなデータは、多数のセンサーや観測所、人工衛星、レーダー、ブイなどから大量に送られており、現在も増加の一途をたどっています。さらに、気候に影響する要因は相互に作用しています。例えば、海洋に吸収される熱を考慮しながら、氷床によって反射される熱も考えなければなりません。また人間の活動による排出量とともに、家畜による排出量も考慮しなければなりません。

人間および従来のコンピューターでは、このような膨大かつ複雑なデータの処理は非常に困難でした。

AIはこうした莫大なデータを分析することに応用でき、従来不可能なタスクを処理することが可能となっていきます。また、データ量が増えるにつれてAIの予測の精度があがることも期待され、気候パターンの発見や異常気象の認識を通して、さまざまなな政策や対策につなげることができます。

参考:AI and Climate Change E-repor

今後、AIを用いて気候変動や自然災害(暴風雨、干ばつ、海面上昇等)の影響を予測することで、人々の意思決定を助けることが期待されます。世界各地の気候変動の影響をもとにさまざまな選択肢の結果を推測することで、気候変動の影響を軽減するために必要な対策を支援することが可能です。

 

② 気候変動が生態系や自然に及ぼしている影響を把握し予測する

2番目に紹介するAIが気候変動への対策に及ぼす影響は、温暖化が生態系や自然に及ぼしている影響を把握し予測することです。

豊かな自然や生態系を保つためには、気候変動が生物や自然に及ぼす影響を把握する必要があります。例えば、今後温暖化が進んでいくと熱帯林の状態はどのように変化していくでしょうか?また、森林が蓄積できる二酸化炭素の量や植物の数、その多様性、そして生息する野生生物種は減少していくのでしょうか?

人工衛星からの画像をAIを用いて解析することで、気候変動に対して変化する生態系や自然の状態を把握することが可能になっていきます。

例えば、温暖化が熱帯林に及ぼす影響について、米国のコロンビア大学では、AIを用いた森林画像の解析が行われています。一枚一枚は切手サイズの画像が国立公園全体をカバーするような膨大な画像を取り組んでいます。従来は、これらの画像を10枚程度分析するだけでも多くの時間が必要で、森林全体の状況を把握するのに十分な数の画像を処理することは困難でした。

研究者たちは、ディープラーニングと呼ばれるAIを用いて、写真の中の多様な生物種を色と形で識別できます。その精度は高速で、かつこうした作業の専門家よりも正確だと言われています。

この他にもAIは、これまで処理できなかった規模の調査を可能にしてくれます。過去の事象や特定のハリケーン、地形、気候などに関する問題をAIを用いて解析すると、将来の予測が得られていきます。

日本でも、森林資源を守るための取り組みにAIが活用されています。例えば、九州林産株式会社、九州電力株式会社、九電ビジネスソリューションズ株式会社の3社は「自治体向け森林資源の見える化サービス」を開始し、ドローンを活用して3Dデータを測定して、そのデータをAIにて分析することによって森林資源を可視化しています。高精度なレーザー測量やAI技術の活用によって、森林の地形や境界を地図上に詳しく表示させることが可能です。また、樹木の本数、直径といった情報も正確に把握できるため、これまで以上に効率的かつ正確に森林資源を把握できるようになります。

AIの活用によって適切な森林経営を行えるようになれば、林業の活性化だけでなく、土砂災害のリスク軽減といったメリットも得られるようになるため、森林をAIで可視化することの価値は大きくなっていきます。

参考:自治体向け森林資源の見える化サービス

 

③ 気候変動の農作物への影響を把握する

3番目に紹介するAIが気候変動への対策に及ぼす影響は、気候変動の農作物への影響を把握することです。

気候変動に最も影響を受ける産業の1つが、代表的な一次産業である農業でと言われています。AIを用いて画像データを分析することで、農作物の状態や収穫量の大規模なモニタリング、さらには食料危機を未然に防ぐための警報システムの実装が可能となっていきます。

現在進行形で画像データの量が増加しているため、AIを活用してデータ処理を自動化することで解析対象となる農作物の画像数を増やし、さらに人間が従来見逃していた細かな特徴も検知できるようになっていきます。専門家が数枚の画像の中の作物にラベルをつけることで、その結果をより広範囲な面積に自動的に一般化する手法が盛んになっています。

例えば、スタンフォード大学から派生した企業であるAtlas AI社では、AIを使用して衛星画像を分析することで、作物収量といった気候問題に関する農業の知見を引き出しています。具体的に、アフリカ大陸を比較的高い解像度と頻度で撮影した大量の衛星画像を用いて農作物の調査を行っています。

AIはこれら画像から、特定の小規模農業区画を見つけ出し、進捗状況を図表化できます。こうした作業を人間が大規模に行うことは従来難しいことでした。この取り組みを国全体に拡大して、国家単位での生産量予測を提供できるようになれば、各国政府がより正確な予測に基づいて作物を輸入する必要があるかどうかを判断でき、また気候変動の影響を地域別に詳細に把握することも可能になります。

参考:AtlasAI

別の例として、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスは、気候変動が私たちの食料供給に及ぼす危険性を調査しています。特にコーヒー豆の栽培地域がどのように変化するかを調べており、AIを使用してどのような要因が作物の生育地や収量、農家の生計に影響を及ぼしているかを明らかにし、どのような気候関連の影響が及んでいくかを探っています。

 

④ エネルギーやものを効率的に利用して温室効果ガスの排出を抑える

AIが気候変動への対策に及ぼす影響に関する4番目のポイントは、エネルギーやものを効率的に利用して温室効果ガスの排出を抑えることです。

AIを用いてエネルギーやものの需要を予測して最適な供給の仕方を提案することが期待されています。また、過去データを対象にパターン分析を行うことで、クリーンエネルギーの発電量や交通需要、そして極端気候現象などの予測にも役立ち、電力システムの最適化やインフラ計画、さらには災害管理などへの応用が考えられています。

例えば、最近では多量の太陽光発電や風力発電を扱う送電網を管理する上で、発電量の短期もしくはリアルタイム予測を用いる場面が増えてきています。ここではAIが発電量と局所的な天候などの関係を明らかにし、得られた知見をベースに将来発電量を予測していきます。

一例として、非営利団体Open Climate Fixは、数時間先の太陽光発電量をより正確に予測するために、衛星画像から雲量を特定し、それを他の気象データや地域データと組み合わせるリアルタイムモデルを開発しています。また、米国エネルギー省と国立大気研究センターは、大規模な太陽光予測システムの共同開発を行っています。

参考:AtlasAI

近年は、太陽光発電の管理のために遠隔監視システムによってAIによるデータ分析もなされています。太陽光パネルは大量に設置されるものであり、どうしても移動コストや目視検査の手間などが発生してしまいます。AIを導入してコンピューターによる監視を行える体制を整えれば、わざわざ担当者が現場に足を運ばなくても常時モニタリングすることが可能になります。またこれまでは、長年の業務によって培った経験によって不具合を発見するというのが一般的でしたが、AIを活用することで統計的に不具合を見つけることができるようになり、大幅な業務効率化が望まれています。

その他にも、例えばMicrosoft社のAI for Earthプロジェクトでは、多くの研究者に助成金を与え電力使用に関係するコストと二酸化炭素排出量の削減にAIを活用し始めています。AI for Earthは、地球上のさまざまな環境問題を解決するためにAIを展開するという5ヶ年計画のもと、200以上の助成金を提供しています。

AIの活用によって、暖房・換気・冷房システムが効率化され、温室効果ガスの排出が削減されることも嘱望されています。商業ビルや住宅において最適な空調の設定方法を特定するためにAIが活用されています。

日本でも、一例として国内最大級のデータセンターを有する株式会社ハイレゾが、データセンターを廃熱効率に優れた設計にすることで、エアコンを使うことなくサーバールーム内の温度・湿度の調整が行えるようにしています。稼働中の第1データセンターでは、エアコンを使わないことで約90%もの空調電力削減に成功しています。

参考:PR TIMES

⑤ AIを活用して気候変動を解決する新しい技術開発を加速させる

最後に、新しい技術開発や科学実験の加速にもAIの応用が考えられます。過去の実験に基づく学習から、将来的に成功する可能性が高い実験を提案するといった形で、AIは科学やものづくりにおける新発見を助ける可能性を秘めています。このようなイノベーションが盛んになれば、気候変動を抑制する電池やクリーンエネルギーなどの各種開発が進んでいきます。

具体例として、電池産業における研究開発ではAIが盛んに活用され始めています。例えば、電池の容量劣化の評価という、現段階では理解が進んでいない問題に対して、AIを使ったデータ分析が行われています。また、新しい材料の発見を加速させる上でも、例えば次に試すべき材料候補を挙げるために大規模な材料のデータベースを分析するといった形で、AIが役に立つ可能性があります。

このように、AIは現在の社会の仕組みだけではなく、将来の新しい技術を通して、気候変動への対策に影響を及ぼしていきます。

 

人工知能が気候変動への対策「SDGs13」におよぼす懸念点

ここまで見てきた通り、AIは気候変動の緩和と対策に寄与できるものです。一方で、用途や実装方法によっては、AIそのものや、AI主導の関連技術が世界の資源消費量や温室効果ガスの排出量を増加させる懸念も存在しています。

他にも、AIの使われ方によっては、気候変動を助長することにもつながる恐れがあります。例えば、人工衛星画像を解析する方法は、農業の生産性に関する情報の収集や建物のエネルギー消費量の予測に使えますが、石油や天然ガスの探査の拡大にもつながるかもしれません。あるいは、自動運転車は運転の効率向上を可能にする一方で、車両運転の量を増やしてしまう可能性もあります。

そのため、AIがより持続可能な未来の実現に向けて担う役割は人間によって慎重かつ公平に決めるべきということが専門家の中で強調しています。言い換えると、AIが資源消費量や温室効果ガスの排出を削減できるかどうかは、効果的な政策や社会の枠組み、そして人々の判断にかかっています。

 

人工知能が気候変動への対策「SDGs13」におよぼす影響のまとめ

AIの気候変動への対策「SDGs13」におよぼす影響のまとめ

AIが気候変動への対策「SDGs13」に与えるメリットをもう一度まとめておきます。

① 気候変動や自然災害(暴風雨、干ばつ、海面上昇等)の影響を予測する

② 気候変動が生態系や自然に及ぼしている影響を把握し予測する

③ 気候変動の農作物への影響を把握する

④ エネルギーやものを効率的に利用して温室効果ガスの排出を抑える

⑤ AIを活用して気候変動を解決する新しい技術開発を加速させる

 

結論として、気候変動に対して効果的に対策するためにはAIの活用が重要だと多くの専門家が唱えています。なぜならば、気候は複雑な現象であり、AIの助けがあった初めて膨大なデータの処理と予測、さらには制御が可能となるからです。

このようなAIの活用の基本的なコンセプトとしてあるのは、膨大なデータを上手く活用することで、気候変動をより理解し、緩和と適応を進めていく、ということになります。

ただし、こうしたAIの応用には、潜在的なリスクも存在します。データが意図しない目的で使用されたり、AIツールが手作業に取って代わり、人間の労働機会が減少して貧富の差が増加することを危惧する声もあります。

そのため、AIの利用には、適切な規制やルールが設定されることが世界的に求められています。

今、私達にできること

✔︎A Iを気候変動への対策「SDGs13」に活用するために私たちにできること

・自分のデータの扱われ方を知る

・AI技術の活用例を偏見なく知る

これまでを踏まえて、最後に私達にできることを述べておきます。

私たちの社会において、今後ますますAIの役割は大きくなっていくと言われています。AIがより良く活用され、私達の社会が豊かになっていくためには、個人個人がAIが自分達に関する情報をどのように扱うかを積極的に決められるようにするのが大切であると言われています。そのため、個人のプライバシーも含めて、自分のデータがどのように扱われているか、まずは意識をすることが大切です。

また、AIの開発速度は人類の歴史上もっとも早いと言われています。人類の歴史を振り返ると、核反応の開発や実装に代表されるように、新しい技術はどのように扱うかが社会に恩恵をもたらすかどうかの鍵になっていきます。個人、政府、そして環境からの視点でより安全でリスクの低く、さらには多様性を保ったAIの活用が求められ、そのための政策や規制の枠組みが求められます。私達に出来ることととして、これまで述べたようにどのようなAIの技術がどのように私達の生活に影響しているのかをなるべく偏見なく知ることが大切な第一歩です。

皆さんも、今できることはなにか?ぜひ、考えてみてください。

SDGsに特化したSNS「Sustty」では、様々なSDGsアクションを紹介しています。

https://sustty.com

1人1人の影響は小さいかもしれませんが、みんなが取り組むと「チリも積もれば山となる」で、大きな影響になります。

ぜひこれらの活動を参考に、世界を持続可能にしていきましょう!

また、Sustty-noteのサイトでは、SDGsに関わる様々な情報を掲載しています。宜しければぜひご参考にしてください。

>【完全ガイド】SDGsとは

 

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