Sustty編集部がお届けするSDGs情報です。
こんな疑問に答えます。
この記事を書く私は、サステナブルに興味がある事業の企画者です。どうしたら社会を楽しくサステナブルなものに出来るか考え、それに貢献できるように次世代のモノづくりやソリューションを提案しています。
さて今回は、SDGsウォッシュという言葉を取り上げてみたいと思います。はじめに、簡単な言葉の意味を紹介します。
✔︎SDGsウォッシュとは
SDGsウォッシュ (SDGs Washing)
・国連が定める17の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組んでいるように見えて、実態が伴っていなかったり、データが無かったりする状況
・SDGsの一部分のみ強調されて取り組みがなされ、他の項目に悪影響を及ぼしているさま。
英語で「ごまかし」「粉飾」を表す「ホワイトウォッシュ(whitewash)」と「SDGs」を組み合わせた造語であり、「グリーンウォッシュ(green wash)」という言葉が由来であると言われています。
そのため、SDGsウォッシュは環境や貧困、教育、ジェンダーなどを含め、SDGsの17ゴールに対してイメージと実態に開きがある企業や取り組みを批判するのに使われています。
なぜSDGsウォッシュがでてきるのでしょうか?そして、どのようにしたらSDGsウォッシュに流されず、より効果的なSDGsアクションをとれるのでしょうか?
本記事では、SDGsウォッシュの概要を含めて「SDGsウォッシュとは?その本質とサステナブル貢献へ気を付けたいポイント」について紹介します。今起きていることを正しく認識して、自分になにかできるか考え、今日からの取り組みに繋げてもらえたら嬉しいです。
目次
そもそもSDGsとは?
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴールに分かれていて偏りなく「持続性」を推進できるように作れています。
SDGsは、17のゴールに分けられており、それぞれのゴールを達成するために細かく決められてた169のターゲットから構成されています。
詳細については次の記事で紹介します。
関連記事:【完全ガイド】SDGsとは?初心者のための分かりやすい網羅書
SDGsウォッシュとは?本質についても紹介
SDGsは、サステナブルな社会の実現に向けて作られた非常に包括的なゴールといえます。
最近は企業や組織のPR活動や広報でも使われることも多いSDGsですが、そのような「うたい文句」と「実態」に大きな隔たりがあったり、注目しているSDGs項目の他に悪影響を及ぼしたりすることがあります。
これは別の見方をすれば、SDGsという幅広い指標は、企業活動やサービスの実際の姿を見極める道具としても使えるということを意味します。
では、そもそもどうしてSDGsウォッシュが起きるのでしょうか?改めて、SDGsウォッシュの意味を再掲します。
✔︎SDGsウォッシュとは
SDGsウォッシュ (SDGs Washing)
①国連が定める17の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組んでいるように見えて、実態が伴っていなかったり、データが無かったりする状況
②SDGsの一部分のみ強調されて取り組みがなされているが、他の項目に悪影響を及ぼしているさま。
つまり簡単にいうと、SDGs内容について「①事実でない(ウソをついている)」「②適切に評価できていない」場合にSDGsウォッシュが起きます。
ではどうしてこのような事態になるのでしょうか?その本質は、次の2つに要約されます。
① 目先の利益を優先し、SDGsがひとつの広告材料のみになっている
② 幅広いSDGsや自分の取り組みの影響が分かっていない
① 目先の利益を優先し、SDGsがひとつの広告材料のみになっている
SDGウォッシュが起こる1つの本質的な理由は「目先の利益のみを優先するから」です。
資本経済が中心である現代社会において、多くの企業の優先課題は、なるべく早くより多くの収益を生み出し株主の期待に応えていくことにあります。
社会貢献や環境貢献が根底にあっても、利益をあげて資本を増やすほど、貢献のしやすさや規模を大きくするため、まずは売り上げや利益をあげなくてはと考えるのが一般的です。
例えば、新しい事業を考える際には、「このサービスはこのようなユーザーのニーズにこたえるから魅力であり、市場規模と潜在ニーズから推定すると売り上げと収益は○○年までに○○円が見込まれます」といった流れがとられます。
誤解してほしくないのは、売り上げや利益を考える事態は、現代の社会の枠組みにおいて事業そして社会貢献を考えるうえで大切であるという点です。例えば「この商品は環境に良いけど、販売するとずっと赤字です」というものは、事業として継続させることができません。
しかしながら、売り上げや利益のみが優先された場合、ユーザーや関係者の興味がある言葉はただの道具として扱われてしまう恐れがあります。
昨今社会においてサステナブルやSDGsへの関心が高まっていることから、SDGsという言葉自体が人々に興味を持ってもらえるキーワードとなっています。そのため、自社に関心を持ってもらうためにSDGsという言葉をPRや広報、さらに企業レポートにちりばめようという行動はある意味理解できます。
ここで問題になるのが、直近の利益のみを重視し、SDGsの理解やと自身の活動の比較をおろそかにして、実態が伴っていない状況が報告されてしまうことです。
日々の仕事に忙殺され、四半期や月次ごとの収益や実績を求められる体制では、なかなかSDGsの中身を精査する余裕もなく、こうした空洞のSDGs利用が生れてきてしまいます。
② 幅広いSDGsや自分の取り組みの影響が明らかでない
SDGウォッシュが起こる2つ目の本質的な理由は「幅広いSDGsや自分の取り組みの影響が明らかでないから」です。
これは①に関連しますが、自身の活動の影響の全容が分かっていない場合、SDGsを意識していても想定外の(もしくは想定できても軽視してしまう)悪影響が生じることがあります。
つまり、こころから善意で事業やサービスをおこなっていても、SDGsに関する理解や関心の不足によって、自身のメインの分野と他のところで悪影響を及ぼす可能性もあるのです。
例えば、
・非常に質の高いとされる教育プログラムを教育機関がそろえても、その料金が高くてはSDGsの要件を満たしていません。
・新しい仕事を生み出しても、その賃金が最低賃金未満の場合には、貧困の解決に貢献しているとは言いがたく、SDGsの要件を満たしていません。
持続可能な取り組みを評価する上では、持続性に対して、ポジティブな事柄(良い取り組み)に加えて、ネガティブな取り組み(悪い取り組み)を評価・報告することが求められます。
SDGsの表面的な印象から「自社が取り組んでいる良いこと」について報告しがちですが、負の側面(悪い取り組み)について考え、対処することを含めて評価・報告することが必要なのです。
SDGs ウォッシュの事例は?
それでは、SDGsウォッシュの事例について紹介します。具体例を参考に、SDGsウォッシュをしない・認めないことに加えて、改善するために何ができるのか考えていきましょう。
SDGs ウォッシュの事例①:現地生産現場での強制労働
企業
グローバル企業83社
内容
強制労働:強制労働言及への非明言
2020年に、国際人権に関するNGOヒューマンライツ・ナウから中国に工場をもつグローバル企業83社が、新疆ウイグル自治区に住むウイグル人を強制労働させているという報告がありました。このうちの12社はユニクロや無印良品などの日本の企業であると指摘されています。
その他の企業として、アディダス、ナイキ、ギャップ、トミーヒルフィガー、BMW、ゼネラルモーターズ(GM)などの有名なグローバル企業が連なっています。
この「ウイグル問題」は近年多くメディアにも取り上げられ、世間からの関心も高まっています。
例えばユニクロの公式サイトでは、服の生産過程における人権・労働環境への配慮が明言されています。しかしながら、新疆ウイグル自治区で製品を生産されているかという質問には答えがなく、自分たちの人権方針や行動規範について書いているのみとなっています。そのため説明責任を果たしていないことで、強制労働の有無がうやむやになっており、文言と実態とのズレからSDGsウォッシュだと批判されています。
SDGs ウォッシュの事例②:大手銀行のSDGsに反した投資
企業
大手銀行
内容
SDGs方針(環境方針)と実務の乖離:新規石炭火力発電所への出資・融資
日本国内の大手銀行は脱炭素の重要性を謳いながら、新しく石炭火力発電所への出資・融資を行うというSDGsウォッシュをしていました。
石炭による火力発電は、二酸化炭素を排出する主な原因の一つであり、多くの企業が電気使用量を減らしたり、再生可能エネルギーへと移行したりすることで二酸化炭素削減を目指しています。実際、国連環境計画(UNEP)は、「高効率型のものであっても、新たな建設は許されず、既存の石炭火力発電所も廃止していくべきだ」と勧告しています。
参考:国際連合広報センター
一例として、みずほ銀行は2019年環境方針の中で主要グループ会社全体のCO2削減を策定しています。しかし、環境方針で見せる態度とは異なり、同年に石炭産業に投資をしており、その融資額は世界トップとなりました。こうした一連のみずほ銀行の姿勢は、日本ではSDGsに貢献している姿勢を見せながら、遠方の国の石炭産業に投資をしているということで強い非難を浴びました。
これを受けてみずほ銀行は、2020年に環境に配慮した投融資の取り組み方針の抜本的な変革に踏み切り、環境方針と事業をすり合わせるための取り組みをはじめています。
SDGs ウォッシュの事例③:材料の調達による自然破壊
企業
ネスレ
内容
環境対策への虚偽報告:パーム油業社との取引き
ネスレはキットカットなどの製品で有名な世界的食品メーカーです。多角的な商品・ブランド展開を行っており、販売地域の広さや規模も様々です。
2010年、アブラヤシから取れるパーム油の調達が熱帯雨林を破壊しているとして、キットカットの不買運動が起こりました。その後、ネスレは森林破壊に寄与するパーム油業者との取引をやめると宣言したものの、2018年になってもそれら業者を生産の一連の流れ(サプライチェーン)に抱えていることが発覚しました。
パーム油は世界中で最も使用されている油の一つで、その生産のために東南アジアを中心に多くの森林が伐採されています。しかしながらこうした環境破壊の原因となっている背景から、パーム油の使用はサステナビリティを考える上で減少させなければならないとされています。
SDGsウォッシュに流されないためにできること
では、SDGsウォッシュに流されず、正しく企業に対して関心を持つために、私たちにできることはなんでしょうか?
✔︎SDGsウォッシュに対して私たちにできること
① うたい文句だけはなく認証や結果をみてみよう
② SDGsを使って幅広い視点でものごとを考えてよう
① 謳い文句だけはなく認証や結果をみてみよう
SDGsウォッシュに関して気をつけたいポイントとして、「謳い文句だけはなく認証や結果をみてみよう」ということがあります。
例えば、スーパーやコンビニのレジに並んでいる商品に「SDGs貢献度No1商品」と書いてあるとしましょう。興味を惹かれその商品の手を取った際に、「何をもってSDGs貢献といっているのだろう」と疑問におもうことはとても大切です。それに続くと問いとして、例えば、「認証されている商品なのかな?」や「地元で作られたもので生産者の顔が見えるのかな?」など商品からわかることもたくさんあるはずです。
ここでヒントとなるのがSDGsに関する認証機関です。SDGsに関する認証としては下記のようなものがあります。
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- 国際フェアトレード認証ラベル: 生産者への適正価格の保証や、人権・環境に配慮した基準を満たしていることが認められた商品
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- GOTS: オーガニック繊維を原料とし、かつ社会責任に配慮して環境負荷の少ない方法で作られた商品
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- 有機JAS マーク: 農薬や化学肥料を控え、自然界の力で生産されたことを国が指定した食品
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- 伝統マーク: 地域に根付き継承されている技術や技法、自然素材で製作されたことを国が指定した伝統工芸品
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- エコマーク: 生産から廃棄にわたり、環境への負荷が少なく、環境保全に役立つ商品であることが認められた商品
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- レインフォレスト・アライアンス認証マーク: 持続可能な農法に取り組む認証農園で栽培された原料を用いた製品
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- FSC®認証: 適切に管理された森林からの木材や適格だと認められたリサイクル資材から作られた商品
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- MSC 認証: 水産資源と環境に配慮した、持続可能な漁業で獲られた水産物
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- RSPO 認証: 熱帯林の環境とそこに生息する生物の多様性に配慮し、生産者の暮らしを守ることが認められた商品
このような認証のマークや、ラベル情報を活用して、その商品があなたが求まる最適のものか?本当に欲しい物なのか?考えてみましょう。また、ニュースやSNSに流れてくる情報も、これはうたい文句だけなのかな?実際の結果やデータはどこかな?といった視点でみてみると、見え方が変わってくるかもしれません。
② SDGsを使って幅広い視点でものごとを考えてよう
SDGsウォッシュに関して気をつけたいポイントとして、「SDGsを使って幅広い視点でものごとを考えてよう」ということがあります。
例えば、良かれと思って使わなくなった服を寄付した場合、その服が流れ着く先はどこなのだろう?その人の生活はどう変化するのかなと、想像をめぐらすことができます。
ここで強調したのは、SDGs自体の枠組みは非常に網羅的な目標であり、良くも悪くもつかうことができるもろ刃の剣だということです。
どうせでしたら、SDGsを上手く活用して、毎日の生活をより楽しくサステナブルにしてみたいものです。ただ、いきなり全ての項目を網羅することは難しいかと思います。そのためにSDGsの大枠のイメージを持って、なにかニュースや活動があった場合にこのSDGsの項目は確かにそうだけども、他の観点から考えるとどうだろう考え、視点を増やすことにSDGsを使ってみるのがいいと思います。
最後に、何事も多角的に考えることは大切である一方、そこで生じた疑いが有意義な行動を妨げることになってしまっては本末転倒になってしまいます。SDGsウォッシュへの視点とSDGsアクションへの行動力をバランスよく併せ持つ、SDGsハイブリッドな人を目指したいものです。
SDGsに特化したSNS「Sustty」では、様々なSDGsアクションを紹介しています。こちらも、本当に有効なのかなという視点ももって是非のぞいてみてください。
1人1人の影響は小さいかもしれませんが、みんなが取り組むと「チリも積もれば山となる」で、大きな影響になります。
ぜひこれらの活動を参考に、世界を持続可能にしていきましょう!
また、Sustty-noteのサイトでは、SDGsに関わる様々な情報を掲載しています。宜しければぜひご参考にしてください。