【2022年版】人工知能(AI)がSDGs14「海の豊かさを守る」におよぼす影響を解説

Sustty編集部がお届けするSDGs情報です。

マリモっち
綺麗な海を保ちたいなあ。。ごみ拾いをしようとは思うけど。なにか新しい方法はないのかな?ネットで人工知能って見たけど、何か関係あるのかな?

こんな疑問に答えます。

この記事を書く私は、サステナブルに興味がある研究開発者です。海をぼーっと見るのが好きで、私たちの活動で海洋が汚染されたり、多様性が損なわれたりするのを何とかしたいなあと思います。

さて今回は、世界で注目されている技術、人工知能(AI)が海の豊さに与える影響を見ていきたいと思います。

 

人工知能(AI)がSDGs14におよぼす影響の前に知るべきこと

初めに本記事に関連する2つのキーワード、SDGs14と人工知能を紹介します。

SDGs14「海の豊かさを守る」とは?

そもそもSDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際的な目標です。17のゴールに分かれていて、偏りなく「持続性」を推進できるように作れています。また、それぞれのゴールを達成するために細かく決められた169のターゲットがあります。

この中の14番目のターゲットが「海の豊かさを守る」ことを目標とし、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用することを目的としています。だれもが海の資源と共存していける環境をつくることが大切になります。

SDGs14の詳細については次の記事で紹介します。

関連記事:SDGs14とは?海の問題と「海の豊かさを守る」ための持続可能な開発目標

 

人工知能(AI)とは?

もう一つのキーワード人工知能(AI)も簡単に紹介します。

人工知能(AI)

・人工知能(AI)とは、人間のふるまいの一部をソフトウェアを用いて人工的に再現したもの。経験から学び、新たな入力に順応することで、人間が行うようにタスクを実行することを目指す。現在までの応用例としては、チェスをプレイするコンピューターや、画像認識、言語翻訳、自動運転車などが挙げられる。

AIの出現により、私たちの生活におけるすべての分野がほぼ例外なく影響を受けて変化していくと予想されています。例えば、産業における生産性や公平性などの社会構造、環境分野、コミュニケーションや金融の仕組みといったあらゆる分野が考えられます。

2020年には、スウェーデンの研究機関が、世界の研究者の意見を総合してAIの環境面への影響を調査し、環境に関するSDGsに対して多くのメリットがあることが示されています。

AIのSDGsに関する影響に関してはこちらの記事でも紹介してますので、是非ご一読ください。

関連記事:【2022年 | 最前線!】人工知能(AI)がSDGsにおよぼす影響は?

 

AIの環境面における代表的なメリットとして、膨大で複雑なデータを解析して自然環境や生物、資源を保護するための活動に生かすことが考えられます。AIによる生態系や環境汚染のモニタリングは、きちんと活用されれば、生態系の保存や生物多様性の確保につながります。一方で、得られたデータが悪用されることも考えられ、例えば動物や環境資源の場所が特定され乱獲されることが懸念されます。

 

人工知能がSDGs14「海の豊かさを守る」に与える影響は?

では、ここからは人工知能がSDGs14「海の豊かさを守る」に与える影響について紹介します。本記事では大きく3つのポイントを見ていきます。

① 海の汚染状態を把握して効率的にきれいにする

② 違法な漁業を把握したり、漁業をより効率的にしたりする

③ 生態系を見える化して、生物多様性の把握や保護に役立てる

参考:Applied Intelligence 

① 海の汚染状態を把握して効率的にきれいにする

最初に紹介するAIのSDGs14「海の豊かさを守る」への影響は、海の汚染状態を把握して効率的にきれいにすることです。

AIを応用することで、生態系において問題が生じている個所をより明確に特定することが可能です。例えば、衛星や各所に設置されたカメラからの画像をAIによって分析して、ごみや海洋汚染が生じている場所とその被害状況を把握することができます。状況を正確に判断することで、より効率的かつ速やかな環境の保全につなげることが期待されます。

具体例としては、プラスチック海洋ごみやタンカーの座礁による油汚染、不法な廃棄物投棄等が挙げられます。

このうちの海洋ごみに関して、毎年900万トン近くのプラスチックが主に河川を通じて海洋に流入しています。このプラスチックは巨大な塊となり、分解されるのに長い年月を要するため600以上の海洋生物種に影響を与え、海洋の生態系に有害になっていきます。

従来プラスチックを手作業で除去することはコストと時間がかかり、やり方を間違えると大量の二酸化炭素排出につながります。そのため、AIを用いた画像解析を基本としたより効率的なプラスチックの除去方法に期待が集まっています。

例えば、アメリカのオーシャン・クリーンアップは、橋に設置されたカメラで浮遊物を撮影し、AIを用いてプラスチックの位置を特定します。そのデータをもとに、自律型回収装置がプラスチックを回収する位置に配置されます。

また海上では、クリーンアップシステム上のセンサーによって風や流れのデータを収集し、特定のアルゴリズムにより、クリーンアップシステムが海中をどのように移動するかをシミュレーションできます。

オーシャン・クリーンアップではこの2つのシステムを大規模に組み合わせ、2040年までに海洋プラスチックを90%削減することを計画しています。

参考:Ocean Cleanup

② 違法な漁業を把握したり、漁業をより効率的にしたりする

AIのSDGs14への影響に関する2番目のポイントは、違法な漁業を把握したり、漁業をより効率的にしたりすることです。

世界の人口が増加している中、持続可能な食糧の供給や維持に魚介類が大きな役割を果たすと言われています。実際に魚1キログラムあたりに排出する二酸化炭素量はわずか2キログラムであり、最も持続可能な陸生タンパク質が排出する量の半分以下であることが分かっています。

しかし、これまでの漁業や海産物の流通には、持続可能性を高めるような仕組みがきちんと行われているのか不明な点が残っていました。例えば、地域ごとに条例や品質保証などが異なり、消費者から見ても実際にどの産地でどのように収穫された魚介類かが疑わしい部分がありました。

実際に、世界的な海洋保全・保護NPO「Oceana」の調査によると、米国では約20%の魚の誤ったラベルが付けられ、そしてその誤りの多くが、サーモンやスズキ、ホタテなど、人気の高いシーフードに集中していたそうです。

こうした課題に対応するため、AIを用いた漁業や養殖業の実態の把握と、正確な管理が期待されます。AIを使った画像認識により、船舶の大きさや活動状況を把握することができます。また、漁獲物の所有者が不明確な国際水域において、誰が何を漁獲しているのかを理解するのに役立ちます。さらに商業的に漁獲された外来種がどのようなに広まっていくかを理解するにもAIが役立つとされています。

参考:UTS Tech Lab

また、AIによって気象条件をより正確に予測することで効率のよい漁業を促進することも期待されます。日本においても、水産業や漁業が直面する課題を改善するため、AIをはじめとしたICTを活用する「スマート漁業」が注目されています。

例えば、JAXAの水循環変動観測衛星「しずく」は、地上700kmの宇宙から、海面水温の解析や降水量、水蒸気量などのデータ観測・監視を続けています。このようなデータをもとに水温分布図を作成して洋上の漁船に提供する漁業情報サービスが始まっています。データに裏付けされた効率的な漁業と、獲りたい魚を獲る漁業を実現することが狙いです。

このようなビッグデータの解析にAIはなくてはならないものです。特に海洋データは膨大なデータ量であるだけでなく、流動的でもあるため、過去のデータをもとに学習と運用を繰り返し、得られた最新データをフィードバックして、精度をあげることが求められるからです。

参考:JAXA

③ 生態系を見える化して、生物多様性の把握や保護に役立てる

AIのSDGs14への影響に関する3番目のポイントは、生態系を見える化して、生物多様性の把握や保護に役立てることです。

人工衛星や現地のセンサーから送られてくる大量のデータをAIで解析して、生物の分布や生態系の変化を見える化することも、AIの応用例になります。

日本でも、琉球大学の研究チームが、海洋生物に関するデータとAIをもとに、海の生態系を見える化し、様々な関連団体と連携して海の豊かさを守るプロジェクト“Ocean180”をスタートさせています。プロジェクトでは、以下の三つの目標が挙げられています。

産官学連携プロジェクトーOcean180ー

目標①:誰もが使えるような海の生物多様性ビッグデータを整備して、海洋生物に関する様々な情報を統合するツールを開発。AIを用いて生態系の多様性及び保全利用の指標値をマップ化し、行政機関や海に関わる様々な企業が利用可能な情報基盤を提供。

目標②:持続的な海洋保全利用に関する技術を開発。世界・日本スケールで生物多様性のパターンを予測して、環境変動も考慮した保護区の配置をする。温暖化・沿岸開発・漁業・海運に関係した海の生物多様性と生態系の劣化リスク評価を行う。

目標③:様々な業界との連携で社会実装を推進。例えば、海洋生物可視化アプリケーションによる教育事業、生物多様性に影響が少ない海運オペレーションモデル構築、海の豊かさの脅威に関わるリアルタイム評価監視システムの構築などを推進。

参考:琉球大学

海上や海中で何が起きているかをより正確にすることで、今後の漁業の在り方や生態系の保護の仕方を改善することに役立てることができます。また、海洋の生物多様性の変化を視覚的に表すことで、海の豊かさに関する社会への啓蒙や学校教育への展開も期待されます。

今後気候変動が続いていく中で、海洋生物の生態分布が変化していくことが考えられます。AIによって生物の生息エリアの変化を把握し、必要な保護や対策をすることで、気候変動にも適応しながら「多様な海洋生物」=「海の豊かさ」を保つ手助けになります。

 

人工知能(AI)が海の豊かさ(SDGs14)におよぼす影響のまとめ

AIのSDGsへの影響に関するまとめ

AIがSDGs14「海の豊かさ」に与えるメリットをもう一度まとめておきます。

① 海の汚染状態を把握して効率的にきれいにする

② 違法な漁業を取り締まり、漁業をより効率的にさせる

③ 生物多様性を見える化して、生態系への影響を把握する

 

このようなAIの活用の基本的なコンセプトとしてあるのは、膨大なデータを上手く活用することで、海の豊かさや美しさを保つ、漁業を健全かつ効率的にする、そして生態系に関する現状と今後の在り方を理解して対策を行う、ということになります。

ただし、こうしたAIの応用には、潜在的なリスクも存在します。データが意図しない目的で使用されたり、AIツールが手作業に取って代わり、人間の労働機会が減少して貧富の差が増加することを危惧する声もあり、沿岸の漁業に依存する小規模なコミュニティにとっては大きな懸念材料となっています。

そのため、AIの利用には、適切な規制やルールが設定されることが世界的に求められています。

私達にできること

✔︎A IをSDGsに活用するために私たちにできること

・自分のデータの扱われ方を知る

・AI技術の活用例を偏見なく知る

今回は、AIが海の豊かさに及ぼす影響を見てきました。最後に私達にできることを述べておきます。

私たちの社会において、今後ますますAIの役割は大きくなっていくと言われています。AIがより良く活用され、私達の社会が豊かになっていくためには、個人個人がAIが自分達に関する情報をどのように扱うかを積極的に決められるようにするのが大切であると言われています。そのため、個人のプライバシーも含めて、自分のデータがどのように扱われているか、まずは意識をすることが大切です。

また、AIの開発速度は人類の歴史上もっとも早いと言われています。人類の歴史を振り返ると、核反応の開発や実装に代表されるように、新しい技術はどのように扱うかが社会に恩恵をもたらすかどうかの鍵になっていきます。個人、政府、そして環境からの視点でより安全でリスクの低く、さらには多様性を保ったAIの活用が求められ、そのための政策や規制の枠組みが求められます。私達に出来ることととして、これまで述べたようにどのようなAIの技術がどのように私達の生活に影響しているのかをなるべく偏見なく知ることが大切な第一歩です。

 

皆さんも、今できることはなにか?ぜひ、考えてみてください。

 

SDGsに特化したSNS「Sustty」では、様々なSDGsアクションを紹介しています。

https://sustty.com

1人1人の影響は小さいかもしれませんが、みんなが取り組むと「チリも積もれば山となる」で、大きな影響になります。

ぜひこれらの活動を参考に、世界を持続可能にしていきましょう!

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