Sustty編集部がお届けするSDGs情報です。
こんな疑問に答えていきます。
この記事を書く私は、サステナブルに興味がある研究開発者です。気候変動に対策するため、いかに温室効果ガスの排出を減らすことができるかを考え、新しい技術やビジネスの可能性を探っています。
そこで、本記事では、気候変動を解決する重要な一手と考えられているカーボンサイクルに着目し、「気候変動への解決策?カーボンリサイクルを分かりやすく紹介」と題して、温室効果ガスのリサイクルに関する概要や種類、課題、そして日本の事例をみていきたいと思います。
気候変動の解決策の一つになりえるカーボンリサイクルについて知り、自分に興味があることや実践できることを考え、日々の生活での改善アクションにつなげてみてください!
目次
気候変動への解決策?カーボンリサイクルを分かりやすく紹介をみていく前のおさらい
気候変動とは?
気候変動とは、気温および気象パターンの中・長期的な変化を指します。気候変動は、気候の変化による健康被害や災害の増加、人が住める地域の水没など人間生活に対するリスクを有し、世界的に問題視されている問題です。この変化は、大きく2つの要因、「自然の要因」と「人為的な要因」があり、特に問題となっているのが後者になります。
気温の上昇を緩やかにし、その影響を緩和するために、温室効果ガスの削減が求められています。また、まちづくりや人々の対応を通して、気候変動による環境の変化に適応していくことも重要となっています。
気候変動に関してはこちらの記事で紹介しています。
SDGs13「気候変動に具体的な対策を」とは?
気候変動に関連する世界的な目標としてSDGsというものがあります。これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際的な目標です。17のゴールに分かれていて偏りなく「持続性」を推進できるように作れています。詳細については次の記事で紹介します。
SDGsの13番目の目標、SDGs13は、「気候変動に具体的な対策を」のキャッチフレーズのものと、温室効果ガスを減らして、住みやすい気候を保つことを目標としています。温室効果ガスの排出の抑制(緩和)と、地球温暖化現象が招く影響を軽減(適応)することが大切となってきます。詳細はこちらをご覧ください。
気候変動への解決策?カーボンリサイクルの概要
ここからは気候変動に対する解決策の一つとして、カーボンリサイクルに関してみていきたいと思います。まずはその概要と種類を紹介します。
気候変動への解決策?カーボンリサイクルの概要
カーボンリサイクル
カーボンリサイクルとは、温室効果ガスである二酸化炭素を新たな炭素資源(カーボン)と捉え、回収し、多様な有価物として再利用(リサイクル)することを意味します。鉱物化によるコンクリート、人工光合成等による化学品、メタネーション等によう燃料へ再利用などが代表的な例として挙げられます。
日本は2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする(カーボンニュートラル)ことを宣言しており、カーボンリサイクルはその実現のカギを握るテクノロジーとされています。カーボンリサイクルは二酸化炭素の削減と活用に寄与するだけでなく、再生可能エネルギー(再エネ)との組み合わせが可能であることも特徴です。さらに、カーボンリサイクルのコスト削減や社会実装を進めていけば、日本初の技術をグローバルに展開できる可能性もあります。
カーボンリサイクルはあらゆる分野に適用できる考え方であり、カーボンリサイクル産業と呼べる各種の産業が期待されます。その分野は基礎研究から生活に身近な製品まで、多種多様です。
二酸化炭素は一つの炭素原子と二つの酸素原子からなる構造を有し、そのままの分子として、もしくは結合を組み替えることで、様々な化合物として活用できる可能性を有しています。現在において、世界では31ギガトンもの二酸化炭素を毎年大気中に排出しており、量としてみても化石燃料に代わるカーボン源として捉えることができます。
一方で、二酸化炭素は非常に安定した化合物であるため、結合を組み替えるためにはエネルギーを加える必要があります。そのため、いかに効率的にエネルギー用いて、全体として二酸化炭素を減らす形で、カーボンリサイクルを実現していくかが重要になってきます。
参考:資源エネルギー庁
【解決策?】気候変動に対するカーボンリサイクルの種類
カーボンリサイクルを実現するためには、最初のステップとして二酸化酸素を回収する必要があります。回収された二酸化炭素は、有用物として活用される(二酸化炭素回収&有効活用:CCU)、もしくは二酸化炭素のまま貯蔵される(二酸化炭素活用・貯蔵:CCS)ことになります。カーボンリサイクルはこのCCUにあたり、その化合物の種類によって化学品、燃料、鉱物、そのほかに分類することができます。
例えば、二酸化炭素を吸収してつくったコンクリート製品や構造物などの鉱物は既に実用化されています。またその他の例として、二酸化炭素で培養される藻類を原料としたバイオ燃料などの燃料や化学技術によってつくるプラスチック原料などの化学品などもカーボンリサイクルとして挙げられます。
二酸化炭素を回収する場所や方法もいくつか存在します。大別すると、発電所の排ガスなど比較的二酸化炭素が高濃度存在するガスを用いる方法と、非常に濃度は薄いながら大量に二酸化炭素が存在する大気中から二酸化炭素を回収する方法が挙げられます。
さらに、カーボンリサイクルは、二酸化炭素を変換する方法によっても分類できます。比較的成熟している熱化学的な方法や、光化学的な方法、電気化学的な方法、そしてバイオ技術によるものが挙げられます。いずれの技術も2030年までにプロセスの低コスト化をターゲットとしており、従来化成品に対するコストが課題であることが伺えます。また、光化学は効率の点で、電気化学は生産性の点で課題を残してていることが伺えます。
【解決策?】気候変動に対するカーボンリサイクルのロードマップ
資源エネルギー庁は、カーボンリサイクルの技術開発が効果的に進むことを目的としてロードマップを策定しています。“カーボンリサイクル技術ロードマップ検討会”が設置され、2019年に最初のロードマップが作られました。その後も費用対効果を踏まえつつ更新がなされ、一つでも多くの分野での技術の確立、普及を目指しています。
ロードマップでは、2030年を比較的短期のターゲットとし、技術確立がしやすい二酸化炭素が入手しやすい環境に力を入れようとしています。さらに2040年以降を中長期のターゲットとして定め、二酸化炭素の利用量が多いものに展開できるように考えています。
✔︎気候変動に対するカーボンリサイクルのロードマップ
2030年:早期の普及実現を目指す
・二酸化炭素を利用しやすい環境の確立(分離・回収・利用の低コスト化)
・既に基礎技術が確立し、低コスト化を図ることで既存製品の代替が可能なもの
2040年以降:中長期に普及を目指す
いまだ未確立の技術である一方、実現した場合、二酸化炭素利用量が多いもの
気候変動への解決策?カーボンリサイクルの課題
気候変動への解決策として注目されているカーボンサイクルですが、現在のところ、その普及には課題もあります。
✔︎気候変動への解決策?カーボンリサイクルの課題
カーボンリサイクルの課題1:コスト
カーボンリサイクル技術でつくられた製品が市場で大規模に流通するようになるには、(付加価値や補助制度がない限り)既存の製品と同程度までコストを下げなくてはなりません。現状では多くの場合、化石燃料からつくられた従来品のほうが製造コストが安く、価格も安価なものになっています。
また、カーボンリサイクル技術として期待されるものの多くは、別途水素が必要となります。そのため水素製造にもコストがかかることが、低コスト化への課題となっています。
カーボンサイクルのコストを下げるためには、技術革新による反応効率の向上や設備に利用される部材のコスト削減等が求められます。また、社会としてカーボンサイクルを促進するための適切な補助制度も引き続き検討が必要です。
カーボンリサイクルの課題2:生産性と流通
カーボンリサイクルのもう一つの課題として生産性と流通が挙げられます。従来の化成品は大量に入手できる化石資源を出発点として大量合成、大量生産の形をとってきました。
二酸化炭素を新しい原料とする場合には、従来の原料入手経路と異なり比較的分散された場所での生産形態が考えられます。そのため、社会のニーズに求められるカーボンリサイクルの生産性を実現していくとともに、生産量に対応した流通も作っていく必要があります。
カーボンリサイクルの課題3:二酸化炭素削減効果の評価
カーボンリサイクルが全体を通してきちんと二酸化炭素の削減に寄与しているかを評価することも大切な課題となってきます。カーボンリサイクルの実装には、新しい製造プラントの建設、精製や反応プロセスの運用、副生成物や廃棄物の処理、実際に作られた化合物の廃棄など様々な要素が関わってきます。そのため、対象とする化合物を製造するための全ての工程における二酸化炭素の排出量を評価し、従来の化石資源由来のものよりも温室効果ガスが削減されているか確認することが大切です。
こうした評価方法はライフサイクルアセスメントと呼ばれ、今後のサステナブルなモノづくりの指標になってくると言われています。加えて、温室効果ガス削減効果をメーカーが証明できるような仕組みも必要です。
気候変動への解決策?カーボンリサイクルの事例
気候変動への解決策?カーボンリサイクルの事例1
日本では、広島県の大崎上島をカーボンリサイクルに関する実証研究拠点とするための整備事業が進められています。拠点化の整備を国と連携して進めるとともに,カーボンリサイクル等の研究開発を行う企業や研究機関,研究者の集積を促すことで,中長期的に地域内で多くのビジネスを成功させ,グローバルな課題解決や地域経済の発展を目指しています。
具体的に、広島県では火力発電から排出される二酸化炭素排出を分離・回収する実証試験が始まっています。これをうけて経済産業省は、二酸化炭素の分離回収が行われている大崎上島を企業や大学等による研究も行える実証拠点として整備すると発表しています。バイオ燃料、化学品、炭酸塩など多岐にわたる研究開発を行うとともに,国内外に向けたショーケース化を目指しています。
参考:広島県
気候変動への解決策?カーボンリサイクルの事例2
北海道・苫小牧でも、二酸化炭素を分離・回収・貯留する「CCS」技術について、初の大規模実証試験が実施されています。二酸化炭素の累計圧入量は当初の目標の30万トンに達し、機械工学、化学工学、地質学、地球物理学など幅広い分野の専門家による議論を踏まえた上で、本実証試験において得られた成果と課題を「総括報告書」として取りまとめ、公表しています。
今後はカーボンリサイクルの実証拠点となるよう、回収した二酸化炭素を活用したメタノールの製造などに取り組んでいくようです。
参考:苫小牧市
気候変動への解決策?カーボンリサイクルの事例3
カーボンリサイクルの中で比較的技術が進んでいるのが、回収した二酸化炭素をセメントの一部に活用していく方法です。ダム、道路、ブロック、ビルなど、コンクリートは身の回りのいたるところで使われていますが、そのコンクリートの主な原料となるのがセメントです。
廃コンクリートなどの廃材などからカルシウムを取り出し、それにセメント製造工程で排出される二酸化炭素を吸着させて「炭酸塩(CaCO3)」にすることで、セメントの主原料である石灰石の代替(人工石灰石)を製造しようとしています。実現すれば、石灰石を使わずに生成する「カーボンリサイクルセメント」が新たに生まれ、さらなる二酸化炭素削減効果が期待できます。
今後は、固定化させる二酸化炭素の量を最大化することが課題となります。また、できるかぎりコストを下げることも重要です。現在一部商品化されている二酸化炭素を利用したコンクリート製品は、一般的なコンクリート製品の2〜3倍の価格のため、既存製品と同じかそれ以下のコストを実現し、市場への普及をはかっていくことが求められます
参考:資源エネルギー庁
気候変動への解決策?カーボンリサイクルのまとめ
気候変動への解決策?カーボンリサイクルのまとめ
ここまで気候変動への解決策として、カーボンリサイクルの紹介を行ってきました。本記事で紹介した内容に関してもう一度まとめておきます。
✔︎気候変動への解決策?カーボンリサイクルのまとめ
気候変動への解決策?カーボンリサイクルの概要
・カーボンリサイクルとは、温室効果ガスである二酸化炭素を新たな炭素資源(カーボン)と捉え、これを回収し、多様な有価物として再利用(リサイクル)すること
・世界で31ギガトンもの二酸化炭素を毎年大気中に排出しており、量としてみても化石燃料に代わるカーボン源として、捉えることができる
・効率的にエネルギー用いて、全体として二酸化炭素を減らす形で、カーボンリサイクルを実現していくかが重要
気候変動への解決策?カーボンリサイクルの種類
・カーボンリサイクルは二酸化炭素回収・有効利用(CCU)にあたり、その化合物の種類によって化学品、燃料、鉱物、そのほかに分類することができる
・二酸化炭素を変換する方法によっても分類でき、比較的成熟している熱化学的な方法や、光化学的な方法、電気化学的な方法、そしてバイオ技術がある
気候変動への解決策?カーボンリサイクルの課題
・カーボンリサイクルの課題1:コスト
・カーボンリサイクルの課題2:生産性と流通
・カーボンリサイクルの課題3:排出削減効果の評価
気候変動への解決策?カーボンリサイクルの事例
・広島県では火力発電から排出される二酸化炭素排出を分離・回収する実証試験
・北海道・苫小牧でもカーボンリサイクルの実証拠点となるよう、回収した二酸化炭素を活用したメタノールの製造などに取り組んでいく
・廃コンクリートなどの廃材などからカルシウムを取り出し、二酸化炭素を吸着させて炭酸塩にすることで、セメントの主原料である石灰石の代替を生成
気候変動への解決策?カーボンリサイクルのまとめを踏まえ私達にできること
このようなカーボンリサイクルに関する研究開発や実用化が進んでいる状況においても、一人ひとりの行動が大切になってきます。そこで最後に気候変動の抑制や適応のために、一人ひとりにできることを改めて紹介します。
✔︎気候変動の解決策に関連して私たちにできること
① 日ごろ使っているエネルギー(とお金)を節約してみる
② 温室効果ガスの排出が少ない製品やサービスを使ってみる
③ エネルギーや温室効果ガスを有効活用する新しい技術を知って試してみる
詳細を次の記事でみていきますので、是非お付き合いください。
このほか、SDGsに特化したSNS「Sustty」では、様々な気候変動に関する具体例を紹介しています。
1人1人の影響は小さいかもしれませんが、みんなが取り組むと「チリも積もれば山となる」で、大きな影響になります。
ぜひこれらの活動を参考に、世界を持続可能にしていきましょう!
また、Sustty-noteのサイトでは、SDGsに関わる様々な情報を掲載しています。宜しければぜひご参考にしてください。